はじめての EmDash入門約 6 分EmDash 1.3.1 で確認

EmDash とは? WordPress との違い

EmDash は、Cloudflare が 2026 年 4 月に公開したオープンソースの CMS です。WordPress と同じように管理画面で記事を書けますが、PHP は使わず、パスワードの代わりにパスキーでログインします。

最終確認: 2026年10月20日はじめての EmDash(1 / 3)

このシリーズでは EmDash で自分のブログを作り、インターネットに公開するまでを順に説明します。この記事は読むだけで、パソコンでの作業はありません。WordPress を使ったことがなくても読めます。

CMS とは

ブログや会社のサイトを更新するたびに、ページの HTML を書き直すのは手間がかかります。CMS(コンテンツ管理システム)を使うと、ブラウザで開く管理画面から記事を書き、ボタンを押して公開できます。記事の一覧やカテゴリーごとのページも、CMS が自動で作ります。

CMS でいちばんよく知られているのは WordPress です。2003 年に公開されてから開発が続いていて、多くのブログや企業サイトで使われています。

EmDash の概要

EmDash は、Cloudflare が 2026 年 4 月に公開したオープンソースの CMS です。最初に出たのはプレビュー版の 0.1.0 で、2026 年 10 月の時点では 1.3 系が出ています。ライセンスは MIT で、だれでも無料で使えます。

Cloudflare は EmDash を「WordPress の精神的な後継」と紹介しています。ただし、WordPress のコードは使っていません。プログラムはすべて TypeScript で書かれていて、Astro という Web サイト用のフレームワークの上で動きます。

EmDash では、管理画面と公開するサイトが 1 つのアプリケーションにまとまっています。管理画面で記事を公開すると、その内容がデータベースに保存されます。読者がページを開くと、サイトはその都度データベースから記事を読み出して表示します。そのため、公開した記事はすぐにサイトに出ます。

EmDash の管理画面のダッシュボード。下書きやメディアの数、最近の更新が表示されている
ブログのテンプレートで作ったサイトのトップページ。管理画面で公開した記事が並んでいる

管理画面は日本語に対応しています。ただし 2026 年 10 月の時点では、「Posts」や「Pages」のように英語のまま残っている項目もあります。このガイドでは画面に表示されているとおりに書きます。

WordPress と同じところ

WordPress で使われている機能の多くは、EmDash にもあります。

  • 投稿と固定ページ
  • カテゴリーとタグ
  • メディアライブラリ(画像のアップロードと管理)
  • メニューとウィジェット
  • 下書き、予約投稿、リビジョン(変更の履歴)
  • ユーザーの権限(管理者、編集者、投稿者、寄稿者、購読者)

WordPress からの引っ越しにも対応しています。WordPress の[ツール]>[エクスポート]で書き出したファイル(WXR 形式)を、EmDash の管理画面で読み込めます。WordPress 側に EmDash Exporter というプラグインを入れて、サイトどうしをつなぐ方法もあります。

WordPress と違うところ

主な違いは次のとおりです。

WordPress

EmDash

プログラムの言語

PHP

TypeScript

動かす場所

PHP が動くサーバー(レンタルサーバーなど)

Cloudflare Workers、または Node.js が動くサーバー

データベース

MySQL または MariaDB

Cloudflare D1、SQLite、libSQL、PostgreSQL

サイトの見た目

PHP で書かれたテーマ

Astro で作ったテンプレート

ログイン(標準)

パスワード

パスキー

プラグイン

サイトのデータやファイルに制限なくアクセスできる

サンドボックス型は、宣言した操作だけを行える

ライセンス

GPL

MIT

パスワードのないログイン

EmDash の管理画面には、パスワードがありません。最初にアカウントを作るときに「パスキー」を登録し、そのあとはパソコンやスマートフォンの指紋認証、顔認証、PIN でログインします。パスワードそのものがないので、パスワードを盗まれたり、ほかのサイトと使い回したりすることがありません。

パスキーは登録したときのドメイン(サイトのアドレス)に結び付いています。あとからドメインを変えるときは、決まった手順で移す必要があります。手順は「本番の初期設定と独自ドメイン」の記事で説明します。

プラグインの安全性

WordPress のプラグインはサイトのデータベースやファイルに制限なくアクセスできます。1 つのプラグインに脆弱性があると、サイト全体のデータが読まれたり書き換えられたりするおそれがあります。Cloudflare は、WordPress のセキュリティ上の問題の 96% がプラグインから来ていると説明しています。

EmDash のサンドボックス型プラグインは、サイトから切り離された環境で動きます。プラグインは使う機能をあらかじめ宣言し、宣言していない操作は行えません。管理者は、インストールする前にプラグインが求める権限を確かめられます。

ただし、Cloudflare でサンドボックス型のプラグインを使うには、Workers の有料プランが必要です。このシリーズの手順ではプラグインを使いません。

テーマとプラグインの互換性

EmDash は PHP を動かさないので、WordPress のテーマやプラグインはそのままでは使えません。サイトの見た目は Astro のテンプレートで作り、必要な機能は EmDash のプラグインとして作り直す必要があります。記事や画像は前の節の方法で取り込めますが、デザインは移せません。

EmDash には、ブログ、ポートフォリオ、会社や製品の紹介サイトなどのテンプレートが用意されています。このシリーズではブログのテンプレートを使います。

向いているサイトと向いていないサイト

EmDash が向いているのは、サーバーを借りずにブログや小さなサイトを始めたい場合です。サイトを置く Cloudflare には無料プランがあり、このサイト(emdash.frees.jp)も無料プランで動かしています。必要になる費用は独自ドメインを使う場合のドメインの登録料くらいです。無料プランには、1 回の表示に使える CPU 時間などの上限があります。アクセスが増えてきたら、有料プランへの切り替えを検討してください。

反対に、次のような場合は WordPress のほうが合っています。

  • 使いたい WordPress のテーマやプラグインがある
  • 日本語の解説記事や質問の答えが多いソフトを使いたい
  • バックアップや更新を、レンタルサーバーの会社に任せたい

EmDash はまだ新しいソフトで、更新も頻繁です。2026 年 9 月 28 日の 1.0.1 から 10 月 18 日の 1.3.1 までの 3 週間に、5 回の更新がありました。このガイドでは各記事の上に、動作を確かめたバージョンを表示しています。

このあとの流れ

このガイドの記事を順に進めると、自分のパソコンでブログを作り、Cloudflare に公開し、独自ドメインで見られるようにするところまでたどり着きます。次の記事では作業に必要なソフト(Node.js と pnpm)と Cloudflare のアカウントを準備します。